
手作りの綿糸と出会いました。
無農薬で育てた綿を、人の手で紡いだ糸だそうです。
写真で繊細な違いを伝えるのは難しいと思いますが、色合いは微妙に変化し、優しく指で挟んで引いてみると、太さも一定で無いことが伝わってきます。
普段使っているレザー用の麻糸や、ブラジル産のマクラメ編み用の糸とは、まったく違う風合いです。
ほぼ一目ぼれで「わたいとや」さんから、ひとつ譲っていただきました。

ワクワクしながら早速ひとつ作ってみました。手紡ぎ綿を使ったクロスのネックレスです。
ところで、レザーを縫う糸は、通常は「ロウ引き」という工程があります。ロウソクのロウのことです。
「ロウ引き」によって、糸のけば立ちが抑えられますし、作成中に糸にかかる負担も少なくなります。
数ミリもあるレザーの縫い穴を何度も何度も通過させるわけですから、糸にもそれなりの負担が掛かるわけです。
にもかかわらず、今回はその「ロウ引き」を一切行いませんでした。
この糸を手に入れるときのこと。
「ロウ引きしても使えるでしょうか?」
「大丈夫だと思います。でも、柔らかさは失われますね。」
そうお答えを頂いた時、一瞬、寂しそうな表情をしたように思えたからです。
一針ひとはり、優しく、糸に負担をかけないように縫い、糸を引き過ぎないように編んでいきます。
出来上がったクロスは、今まで出会ったことのない優しそうな一品となりました。